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ドライバーの残業時間が長い理由は?2024年問題と対処法も解説

ドライバーの残業時間が長い理由は?2024年問題と対処法も解説

長年ドライバー業界が悩まされているのは、ドライバーの残業時間の長さです。

 

その改善策として、働き方改革による大きな変化が、2024年に予定されています。

さらに、2023年にも残業時間に関わる変更があり、ドライバー業界はこの先2年で、転換点を迎えます。

 

もちろん現在ドライバーをしている方々にも、無関係ではありません。

 

この記事では、2023年・2024年にドライバー業界に起こる変化と、ドライバーの方々への影響・対策法についてご紹介します。

 

「残業時間が長くて困る」

「2024年問題について詳しく知りたい」

 

といったドライバーの方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

 

 

1. ドライバーの残業時間の現状

 

以前からドライバーの残業時間がほかの業種と比べ、長いと言われ続けてきました。

実際どの程度残業を行っているのか、少し古いデータになりますが、平成28年のデータで確認してみましょう。

 

《平均的な月における自動車運転従事者1人当たりの月間時間外労働時間【正規雇用者・業種別】》

平均的な月における自動車運転従事者1人当たりの月間時間外労働時間の表

画像|平成28年度みずほ情報総研株式会社厚生労働省委託 「過労死等に関する実態把握のための 労働・社会面の調査研究事業」より

 

時間外労働が月80時間を超えると、過労死ラインといわれています。

 

その80時間を超えているのが全体の5.8%、さらにトラック業界では、100時間を超えるケースも見られます。

 

しかし、1年前の平成27年度には、80時間を超える時間外労働が全体の23.3%、100時間を超えるものは10.5%もありました。

それと比較すると、かなり減少してきているといえます。

 

しかし、まだまだ安心できる数字ではありません。

 

2. ドライバーの残業時間が長い理由

 

ドライバーの残業時間は、なぜここまで長くなってしまうのでしょうか?

 

その原因として次にあげる3つの理由が考えられます。

 

2-1. 仕事量が多すぎる

 

ひとつ目の理由は仕事量が多すぎることです。

 

とくに宅配業界では、ECサイトの発達によるネットショッピングの増加で、配達料は年々増え続けています。

1人が受けもつ荷物量が多すぎて、残業になってしまうのです。

 

2-2. 人材が不足している

 

もうひとつの理由は、人材不足です。

 

人材不足により、一人のドライバーにかかる負担がさらに増え、残業時間が長くなっています。

 

ドライバー業界の高齢化も問題となっており、若手の採用が急務です。

 

2-3. 待機時間が長い

 

荷主の都合によって搬出・搬入まで待機することを「荷待ち時間」といいます。

トラックドライバーの場合、この荷待ち時間の長さも問題となっています。

 

中には、数時間待たされるケースもあり、その結果、長時間労働となってしまうのです。

 

2-4. ETCの深夜割引待ちを指示されている

 

高速道路の深夜割引になる時間を狙って、長時間労働になるケースも見られます。

 

高速道路は、午前0時~午前4時までの間に1分でも高速道路にいれば、料金が30%割引かれます。

少しでも運賃を浮かせたい会社では、ドライバーに対しこの割引を活用するよう指示を出しているのです。

 

早く帰れるにもかかわらず時間にならないため、パーキングエリアや料金所付近の路肩は、待機するトラックでいっぱいです。

 

3. ドライバーの残業時間に関わる2023年問題とは?

 

ドライバー業界だけでなく、すべての業界において、2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、現状25%のところ50%まで引き上げられることになりました。

 

すでに大企業では2010年4月から適用されていたもので、今回中小企業にも拡大されることになります。

 

ありがたいと思うドライバーもいらっしゃるかもしれませんが、現場では「改善」ではなく「改悪」との声もあります。

 

高い賃金を支払いたくないがために、ドライバーに対し無理な要求をするようになる会社が増えるのではないかと危惧しているのです。

通常待機時間は、休憩時間に当たりませんが、これを休憩時間として何とか時間のやりくりをするといった、ドライバーの努力がこれまで以上に必要になる可能性があります。

 

単純に「賃金が上がる」と喜ぶわけにもいきません。

 

2024年問題の方が取りざたされることが多く、2023年問題は忘れられがちですが、長時間残業を行っているドライバーにとっては、かなり重要な法改正となります。

 

4. ドライバーの残業時間に関わる2024年問題とは?

 

さらに1年後には、2024年問題が待っています。

 

2024年4月1日から施行されるのが「改善基準告示」と「時間外労働の上限規制」です。

聞きなれない言葉ですので、ひとつずつ詳しくご紹介していきます。

 

4-1. 改善基準告示の施行

 

改善基準とは、自動車運転者(トラック・バス・タクシードライバーなど)の事故防止と、労働時間の改善をするために定められた基準のことです。

これらの基準が、2024年4月1日より、改正されます。

 

改正により、ドライバーの残業時間にも影響が出ることが予想されます。

現段階で確定ではありませんが、公表されている案を職種ごとに確認してみましょう。

 

なお、文中でご紹介している「拘束時間」とは、始業から終業までの時間(労働時間+休憩時間)のこと、休息時間とは勤務から次の勤務までの間のことで、ドライバーが自由に過ごせる時間のことです。

 

4-1-1. トラックドライバー

 

まず、もっとも影響を受けそうなトラックドライバーの場合です。

休息時間や拘束時間に変更があります。

 

【トラックドライバーの改正改善基準告示内容】

現行 改正案
拘束時間 1カ月 293時間まで 284時間まで
(年間3,300時間)
1日 13時間まで
(最大拘束時間16時間)
13時間まで
(最大拘束時間15時間)
休息時間 1日 継続8時間以上 継続11時間以上取得に努める
継続9時間を下回らないこと
運転時間 2日平均で1日当たり9時間まで
2週間平均で1週間当たり44時間まで
現行通り

 

 

ほかに例外があるものの、おおむね上記のような変更となります。

 

最大の変更点は、1日の最大拘束時間が15時間に減ることでしょう。

その分、残業時間も減少することになります。

 

これは、後程ご紹介する、時間外労働の上限規制にもつながるものです。

 

4-1-2. バス運転手

 

バス運転手の改善内容も確認しましょう。

 

【バス運転手の改正改善基準告示内容】

現行 改正案
拘束時間 1カ月 281時間まで
(年間3,300時間)
1週間 4週間の平均で1週間当たり65時間まで 4週間の平均で1週間当たり65時間まで
(52週の総拘束時間は3,300時間まで)
1日 13時間まで
(最大拘束時間16時間)
13時間まで
(最大拘束時間15時間)
休息時間 1日 継続8時間以上 継続11時間以上取得に努める
継続9時間を下回らないこと
運転時間 2日平均で1日当たり9時間まで
4週間平均で1週間当たり40時間まで
現行通り

 

バス運転手は、路線バスと比べ貸切バスや高速バスの方が長時間勤務になりがちです。

 

そのため労使協定により、1カ月の拘束時間や1週間当たりの運転時間を延長できる例外が設けられています。

とはいえ、それも現行の基準に比べ時間は短縮されています。

 

4-1-3. タクシー・ハイヤー運転手

 

最後にタクシーやハイヤー運転手の改善内容です。

タクシーには、日勤と隔日勤務があり、それぞれに基準が設けられています。

 

一般的な会社員同様に1乗務8時間ほど「昼勤務」もしくは「夜勤務」をする日勤から確認してみましょう

 

【タクシー・ハイヤー運転手(日勤)の改正改善基準告示内容】

 

現行 改正案
拘束時間 1カ月 299時間まで 288時間まで
1日 13時間まで
(最大拘束時間16時間)
13時間まで
(最大拘束時間15時間)
休息時間 1日 継続8時間以上 継続11時間以上取得に努める
継続9時間を下回らないこと

 

続けて、丸1日勤務し次の日は休日の「隔日勤務」の内容は以下のようになります。

 

【タクシー・ハイヤー運転手(隔日勤務)の改正改善基準告示内容】

現行 改正案
拘束時間 1カ月 262時間まで
(労使協定により変更可)
現行通り
2暦日 21時間まで 22時間まで
(2回の隔日勤務の平均が1回あたり21時間まで)
休息時間 1日 継続20時間以上 継続24時間以上取得に努める
継続22時間を下回らないこと

 

どちらも、休息時間を十分取ることが盛り込まれています。

 

4-2. 時間外労働の上限規制

 

改正改善基準告示と同時に適用されるのが、自動車運転の業務に対する「時間外労働の上限規制」です。

 

すでに建設業・自動車運転業以外の業種では、2019年(中小企業は2020年)4月より、36協定で定める時間外労働の罰則付き上限規制が施行されています。

自動車運転の業務に関しては、通常の規制とは異なり、以下のように設定されています。

 

・時間外労働の上限は原則月45時間、年360時間

・臨時的な特別な事情がある場合でも年960時間を限度とする

 

もしも時間外労働が年間960時間を超えた場合、企業に対し、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることになります。

 

現状、残業時間が月80時間を超えている会社の場合、何らかの対策が必要です。

 

 5.2023年問題・2024年問題でドライバーや会社はどう変わる?

 

では2023年・2024年問題により、ドライバーや会社、取引先はどのような変化があるのでしょうか?

現状に鑑みると、改善されるのではなく、全体的に負担が増すことが予想されています。

 

5-1. 会社の売り上げや利益の減少

 

自動車運転を生業にする会社は、やればやっただけ売り上げに直結します。

とくに運送関連会社は、完全な労働集約型の産業です。

 

時間外労働ができなくなることで、会社としては、単純に仕事量が減ってしまう可能性が高いでしょう。

 

5-2. ドライバーの収入減

 

ドライバー業界は、基本給がそれほど高くなく、残業代で収入を得ている従業員が大半です。

時間外労働が減る=収入源に直結し、何らかの対策を取らなければ、生活にも影響を及ぼす可能性があります。

 

この問題が、ドライバーを仕事にしている方にとって、最も重要な変化といえるでしょう。

 

5-3. 運賃上昇による依頼主の負担増

 

売上の減少やドライバーの収入減に対応するためには、運賃を上げることでカバーする方法がもっとも現実的な対策法です。

そのため、ドライバー業界だけでなく、依頼主の負担も増加することが想像できます。

 

一般消費者にとっても、他人ごとではありません。

宅配便の運賃上昇や、サービスの有料化などが実施される可能性もあるでしょう。

 

 6.ドライバーの2023年・2024年問題の対策法

 

ドライバーにとって、2023年・2024年問題がいかに重要なものかお分かりいただけたでしょうか?

 

では、実際ドライバーをしている人は、このままなりゆきを見守るしかないのでしょうか?

考えられる対策法をご紹介します。

 

6-1. 労働環境の改善予定があるか確認する

 

まずできるのは、現在の企業に対し、給与体系や労働環境の見直しの予定があるかどうか確認することです。

 

2023年・2024年問題の影響で、残業時間が減るため、実質手取り額は減少します。

基本給を上げることで、この問題はある程度解決できるはずです。

 

会社側としても、人手不足の今、社員がいなくなってしまうことは避けたいため、見直しを検討する可能性は十分あるでしょう。

 

給与体系や労働環境の改善以外にも、会社として生き残っていくためにIT導入による生産性の向上や合併・売却・買収の検討など、物流・旅客業界はさまざまな対策を講じる必要があります。

これらに関しても、どのような考えでいるのか?実際動き始めているのかを確認してみてもよいでしょう。

 

6-2. 2024年問題が影響しないドライバー職に転職する

 

会社側が何の対策も行わない場合、転職の検討が必要になるかもしれません。

 

今後は、ドライバー業界で、しっかり対策を行った会社とそうでない会社との二極化が考えられます。

 

労働環境のみならず、何の対策も考えない会社は、規模の縮小を余儀なくされる可能性もあるでしょう。

そうなれば、給与アップどころか、働いていくことすら難しくなるかもしれません。

 

転職先としては、しっかり対策を施している会社、もしくはこれらの問題とは関係のない会社が考えられます。

 

たとえばスクールバスやシャトルバスといった運行自体が営利目的でない運転手の仕事や、役員運転手といった仕事は、同じドライバー職でも、2024年問題とは関係がありません。

 

残された時間で、今後どのように働いていくか、しっかり見極めることが重要です。

 

 7.まとめ

 

ドライバーの残業時間の問題は、今後やってくる2023年・2024年問題と密接にかかわっています。

残業時間自体減ることが予想され、それにともない給与も減ってしまう可能性があります。

 

企業が対策を行う必要がありますが、現在ドライバーとして働いている方も、転職を視野に入れながら、ご自身の会社がどのように変わっていくかをしっかり見極める必要があるでしょう。

 

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